INTRODUCTION作品紹介
三船敏郎(1920-1997年)が、日本映画の黄金時代を創り出した偉大な俳優であることに異論を唱える者はいない。生涯に出演したのは約170作品。映画「用心棒」(1961年)、「赤ひげ」(1965年)では、ベネチア映画祭主演男優賞を受賞。これらの代表作は、黒澤明監督との出会いから生まれ、世界中の人々の心を掴んだ。
アメリカでジョン・フォード監督が俳優ジョン・ウェインと共に、荒野に生きる男たちの心情を情感豊かに表現することで、西部劇映画の質を高めたのと似ている。黒澤明監督と三船敏郎は、権力や社会に内在する抑圧に立ち向かう”個の立場”からスケールの大きな物語を紡ぎ、日本のチャンバラ映画を全く違うものに作り変えた。
本作では、黒澤明監督の「羅生門」(1950年)、「七人の侍」(1954年)「蜘蛛巣城」(1957年)』、「用心棒」(1961年)、「赤ひげ」(1965年)、稲垣浩監督の「宮本武蔵」など、全盛期の三船敏郎が出演した重要な作品に焦点を当て、記録映像や家族、俳優仲間、スタッフ、監督、映画評論家などのインタビューをもとに、”サムライ映画の進化”を加速させた三船の役割、そして彼の人生をドキュメンタリーとして描く。
監督は、日系三世のスティーヴン・オカザキ。アカデミー賞候補4回。1991年には、ドキュメンタリー「収容所の長い日々/日系人と結婚した白人女性」でアカデミー賞短編ドキュメンタリー映画賞を受賞。2008年、HBOテレビで放映されたドキュメンタリー「ヒロシマナガサキ」ではエミー賞を受賞した。プロデューサーは、2008年に「おくりびと」(滝田洋二郎監督)でアカデミー賞外国語映画賞を受賞した中沢敏明。また、三船敏郎の孫、三船力也もコンサルティング・プロデューサーとして製作に携わっている。